毎晩そば茶を飲んでいる。お茶を注いだ瞬間に漂う、おかきのようなこうばしい香り。口に含むとほっとする素朴な風味。ノンカフェインで、夜に何倍でも飲める頼もしさ。どれもあまりにも魅力的だ。しかも、ルチンというポリフェノールの一種が含まれていて、体にも良いらしい。
そば茶の虜になったきっかけは福島旅行。南会津地方を旅した際に、道の駅で奈良屋というメーカーの「香ばしいそば茶」を購入したのがはじまりだ。旅中、圧巻の紅葉風景の次に私の心を動かしたのが、なんとこのそば茶だった。
宿に到着し、せっかく買ったし飲んでみようか、となんとなく淹れてみたところ、なにこれ、おいしい……と涙が出そうなほどしみじみと感激。次の日には業務用パックを買い足した。
香ばしいそば茶は、なんといっても香りがいい。香りを食べるお茶だと思う。袋から出した瞬間、急須に入れてお湯を注いだ瞬間、湯呑みにお茶を注いだ瞬間、口に含んだ瞬間。あらゆる瞬間に香ばしい匂いがやってくる。ずっと嗅いでいたいと思うほどおいしい匂いだ。
湯気を吸い込みながら口に含むと、その温かさとやさしい風味がじわじわ体に沁みる。多幸感に満たされて、日常から多く離れた美しく静かな土地に連れて行かれたかのような気持ちになる。仕事や家事の疲れも、なんとなく憂鬱な気持ちも、しゅわしゅわと消えていく。
一度飲んだら、やめられない止まらない。何杯でも飲んでしまう。
南会津はそばの名産地だ。「たかつえそば畑」という観光地にもなっている広大なそば畑があり、夏から秋にかけてあたり一面に真っ白な花が咲く。豪雪地帯である会津の清らかな雪解け水で育ったそばは、ミネラルたっぷりで風味豊かだ。自然の恵みが余すことなく詰まったそば茶は、社会に揉まれてちぎれそうな私たちの心を健やかにしてくれる。
旅先で運命的な出会いを果たした私たちは、奈良屋のそば茶を呑むためだけに急須を買った。
我が家には、もともとお茶を淹れる習慣がなかったのだが、今では毎晩、就寝前にそば茶を飲む。
お茶を飲みながら、のんびりとテレビを見たり、ぼーっとしたり。
たったそれだけだが、それだけのことが至福だ。夜は、そば茶さえあれば何もいらない。そんな気すらしてくる。そば茶は私にささやかなやすらぎをもたらしてくれた。
奈良屋のそば茶はもう何度か通販で買い足しており、常にストックがある。同じ奈良屋の「ダッタンそば茶」にも最近はハマっている。「香ばしいそば茶」よりもルチンという栄養素が豊富なところが特徴だそうだ。味わいはすっきりしていて飲みやすい。
そば茶をきっかけに奈良屋さんに絶大な信頼を寄せた我々は、看板商品の「裁ちそば」などの乾麺や中華麺、めんつゆなども次々と購入してしまった。空前の奈良屋ブームである。奈良屋に親戚がいるのではないかと疑われてもおかしくないほど、キッチンの至るところに奈良屋の商品が置いてあるから笑ってしまう。
これからもそば茶をはじめ、会津の雄大な自然に育てられた美味しい食べものにお世話になりつつ、穏やかなおうち時間を過ごしたい。
会津・奈良屋のHPはこちら